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認定者インタビュー「共済農場」

2019春認定 共済農場インタビュー

2019年2月25日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]

四季を通して魅力溢れる麓郷にある農場

「共済農場」は1974年に設立。

同社がある麓郷地区は富良野市の山間部にあり、自然が豊かである事はもちろん、その風光明媚な景色は年間を通して多くの人々を惹きつけています。

「北の国から」のロケ地として有名なだけでなく、多くのテレビ番組の取材や海外映画のロケでも使われるほど。

敷地内にあるアンパンマンショップは年間を通して多くの家族連れで賑わいを見せ、富良野では観光スポットとしては欠かすことができない存在と言えます。

主力商品のジャムはお土産物としてだけでなく、全国の百貨店からも引き合いが絶えないほどの人気ぶり。

地元でも知らない人はいないほど有名で、定期的に購入している人も少なくありません。

共済農場は2016年に富良野市内にあるトマト農家の「ふらのやまもと農園」は2016年に共済農場の傘下に入りました。

山本さんは先代社長である、大久保尚志さんご夫婦の考え方と社風に魅せられた事。

そして、またお互いの弱点を補い合い、長所を最大限に活かすこともできる…と、声をかけられたのがきっかけでした。

これは「共済農場」の名にふさわしい相互協力の精神に基づいた動きと言えるでしょう。

有機肥料も一切使わないで育てたトマトの生命力

共済農場のプレミアムトマトジュースで使われているプチトマトは「冠陽丸(かんようまる)」というオリジナルブランド。

長年の試行錯誤を重ね、自然農法に近い形で栽培したトマトを100%使用し、甘味料等の味付けもしていません。

商品を紹介されてまず驚いた点が「1本(500ml)で4860円」という価格。

年間に200本限定生産のプレミアム品とは言え、同じ価格帯には有名なワインやウィスキーもあり、トマトジュースにしては破格と言えるほど高い値段です。

しかし、原料となる冠陽丸の栽培方法を聞くと納得できる話。

元々、農場長である山本氏の手掛けていた農作物は有機JAS栽培認証を取得はしているものの、実は有機肥料ですら最小限しか使用しない徹底ぶり。

しかも冠陽丸に関しては、有機肥料すら一切与えず、生育条件を整えるための最低限の手入れしか行っていません。

また、使用するトマトの収穫時期も一番甘みが乗る8月10日頃から約1ヶ月間に限定。

これは、甘みが乗ると同時に「トマトが一番元気な時期」を見ながら、その生命力を丸ごと瓶の中に閉じ込めています。

有機肥料すら使っていない…と聞くと、生育面や品質に問題があるように感じますが、科学的データを取ってみると驚きの結果が出る事に。

なんと、リコピン濃度は大手メーカーの特濃タイプのトマトジュースと同レベル。

ビタミンAやβカロチンなどの主な栄養成分も通常よりも高い数値でした。

冠陽丸は生育面でも病害虫に強く、意図的に農薬や肥料を使わない…というよりも「自然のサイクルを意識すれば使う必要がないだけ」とのこと。

これは一言で言えば簡単そうに聞こえますが、富良野の厳しい自然環境を研究した上で、適切に生育管理を行える匠の技があってこその話だと言えるでしょう。 

農産物は生き物に例えられるように、同じ品種でも生産する場所や時期の違いが味に大きく影響します。

このプレミアムトマトジュースも、まだまだ進化をする可能性があると言い、その思いはラベルの色に現れています(文字が銀色=金賞ではない…という意味)

共済農場は富良野という土地の特性を十分に活かしながら、自社の農産物を客観的かつ真摯的に捉え、日々、地道な商品開発および改良を続けています。

 

 

一命を取り留めた事故がきっかけで感じた「自然の循環」

冠陽丸をはじめとする共済農場の野菜を手掛ける山本農場長の出身は石川県。

元々、機械設計の仕事に携わっていましたが、農業を志した時と同時期にふらの農協が始めた「農業ヘルパー制度」をきっかけに、その一期生として富良野に移り住みました。

 

しかし、農業に抱いていた大きな希望も苦難の連続が続きます。

まず「冬の北海道に住んだことがないなら、就農以前に生活をする事自体が無理!」と決めつけられたり、制度自体が十分に整っていなかったため今ほど手厚いサポートもありません。

さらに、農業ヘルパーからの新規就農の前例が少ないため、就農時の資金調達や農地の確保でも苦労をしました。

それでも農業に対する熱い思いと地域の諸先輩の温かい協力に支えられ、トマト農家として活動をスタートさせます。

 

しかし、充実した日々とは言え、慣れない土地で試行錯誤を繰り返す毎日は決して楽なものではありませんでした。

 

そんな時にある農家さんの有機野菜を食べたことがきっかけになり「人の意識を変えるようなこういう野菜を作りたい!」と強く感じるようになります。

その野菜は感激するほどの美味しさだったことはもちろん、山本さんの農業に対する意識に大きな衝撃を与えるほどでした。

 

しかし、初めから上手くいっていたわけではありません。

病気や虫に悩まされ、中には農作物が全滅した区画もありました。

収穫が出来ても売り先も決まらず、味は良くても農協に出荷するには規格に合わず…。

 

その焦りもあって、作業中の不注意で事故をおこし大怪我をした事がありました。

処置をした医師からも「一命を取り留めても、回復は見込めない…。」と言われるほどの大惨事で、一時は農業だけでなく日常生活すらも諦めざる得ない状況に…。

(しかも、奥様は当時妊娠中で大変な苦労をかけた…と今でも反省しているそうです)

 

この入院生活の中で自分を含め、関わった様々な方の「生と死」が、農業に対する「意識」と「責任」に大きく影響し、さらに人生に対する考え方の礎にもなります。

その後、1年間の入院生活で済むという誰もが驚く劇的な回復をみせ、無事に現場復帰。

 

退院後、入院生活中に感じた様々な想いから「自然の循環」を強く意識するようになり「より自然に近い野菜を作りたい!」と強く考えるようになります。

不自然なやり方をしない事、雑草や害虫・病気で作物が侵食される意味。

全てにおいて繋がりがあり、そのバランスを崩さない事の大切さ。

 

それは奥深い内容であり、ほんの一端の気付きでしかありません。

しかし、意識が変わると作物の生育状況も変わり、同時に味も品質も良くなっていきました。

その姿勢は徐々に「地域での信頼」に形を変え、次第に「山本さんのトマトじゃないとダメ!」というほど根強い地元ファンを獲得するほどになっていきます。

生産数量限定品である事のジレンマ

自然農法に近づけば近づくほど、共済農場の理想に近い野菜にはなりますが、同時に「生産数の限界」という課題も出てきます。

知名度も高く良質な製品を作っていれば当然、全国からの問い合わせが絶えませんが、その全てに応えられる量が確保できない…というジレンマは常に抱えています。

 

単純に敷地面積を増やし、効率的な生産方法を取り入れれば量の問題は解決しますが、それでは本末転倒な話です。

「有機肥料」と一言で言ってもその種類は様々。

中には動物性由来成分を含む海外製の有機肥料もあるため「地球に優しく、何より身体に良い野菜」を突き詰めて考えると、有機肥料と言うだけで何でも使える…という話にはなりません。

共済農場が大量生産方式のメリットも踏まえた上で、敢えて「自然農法に近い形で育てた野菜作り」にこだわり続ける理由はここにあります。

 

しかし、こだわりすぎた結果、生産数量は限定され、価格も高騰。

冠陽丸を使ったトマトジュースの味も甘みが強く酸味が弱いため、正直な話、好みは分かれる内容です。

宣伝広告をしても、限定200本の生産数では供給が追いつかないため、積極的な宣伝も行っていません。

そのため、現状では「知る人ぞ知る限定品」になっており、商品としての価値と魅力をどのように伝えるか?という課題があります。

 

同時に、多くの人に安心安全で美味しい食材を届けたいのも生産者としては本心です。

この強いこだわりと商品としての価値のバランスをどう取っていくか?

共済農場の試行錯誤は今日も続いています。

農作物だけでなく地域を担う人材も育てる共済農場

今回、メイドインフラノに認定したトマトジュースの他にも、トマトソースやドライトマトなどの加工品もあり、順次、認定の準備を進めています。

もちろん、従来品のジャムやスイーツ類への愛情も強く、日々進化を続けています。

 

また、同社のある麓郷を舞台に「富良野未来塾」と題した小学3〜6年生を対象にした食育ワークショップを開催。

農産物だけでなく、それを育む大自然に実際に触れることで、現代日本が抱えている「食」に対する認識を改めて問い直す活動も始めました。

 

地域の特産品を全国に届け、さらに未来を担う子供達にも農業や富良野の素晴らしさを伝える。

これは、共に助け合い成長を続けようとする企業理念を持つ共済農場ならではのメイドインフラノの活動と言えるでしょう。