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認定者インタビュー 緑峰高校

2020冬認定 緑峰高校インタビュー

2021年2月17日 [認定者インタビュー] [minoru]

メイドインフラノに認定された北海道富良野緑峰高校とは?

北海道富良野緑峰高校は平成11年に開校。

園芸科学科、電気システム科、流通経済科、情報ビジネス科の4学科があり、道内で唯一の農業・商業・工業を備えた専門高校です。

今回メイドインフラノに認定されたトマトジュースは、元々は園芸科の加工実習の授業で作られていたもの。

そのため、当初は生徒や保護者、学校関係者の一部の人にしか知られていませんでした。

しかし、味が良いことはもちろん、高校生がトマトの栽培から加工まで行なっている事が注目されるようになります。

さらに口コミは広がり、校内行事や地域での販売会で限定販売をすれば即完売をするほど。

評判と共に高まる地域住民や関係者からの要望もあり、トマトジュースの商品化をすることになります。

 

発起人であり責任者である杉田先生は酪農学園大学出身で、食品製造、農業情報、農業経営、園芸デザイン、カレーライス(?)…等に精通。

生徒達からも「行動が早くて頼りになる!」と信頼が厚く、文字通りプロデューサー的な役割で生徒の活動をサポートしています。

園芸科の全生徒71名(令和3年2月現在)が一丸となり、一つの商品を作り上げています。

 

園芸科全生徒が一から作るトマトジュース

「トマトは嫌いだけど、緑峰のトマトジュースは美味しく飲める♪」と言われるだけあって、味が良いことは間違いありません。

それ以上に「高校生がトマトの苗づくり・栽培・収穫・加工・流通・販売まで関わっている」点が他にない特徴として挙げられます。

実際に作業する生徒も「授業だから仕方がなく…」という半強制的にやらされている雰囲気はなく、むしろ「こんな勉強が出来るなんて楽しい!…夏はさすがに大変ですけど。」と笑顔で取材に応じてくれていました。

 

もちろん、それをサポートする先生方や地域関係者の専門性の高さがあってこそ…という側面もありますが、それでもやはり主役は生徒達。

トマトジュースの加工は1年生が中心になって行い、上級生がトマトを栽培しながらそれをサポート。

そして、販売会や学校行事の際に自分たちが作った商品を自分たちで販売。

生産から販売まで一貫して経験する事で、教科書だけでは学べない貴重な経験を楽しんでいるように見えました。

やはり実際に商品を口にした人の「美味しい!」「ありがとう!」「また買いに来たよ!」などの言葉は、何よりもモチベーションのアップになっているようです。

 

「学業」と「安定供給」の葛藤。そこから生まれる新しい動き。

そんな緑峰高校のトマトジュースの最大の弱点は年間生産数に限界がある事。

基本的に授業で行う実習であることに加え、農場や生産設備も大規模で揃えられないため、年間約600本の生産が上限だと言います。

これは、メイドインフラノの認定商品の中でも特に希少な商品。

そのため、フラノマルシェでの販売も計画は進んでいますが、現時点では富良野市のふるさと納税返礼品のほか、学校行事や商業科販売会でので限定販売に留まっており一般販売は至っていません。

また、授業で作ったトマトジュースを商品化して一般販売するため、生徒の安全や衛生管理の徹底には非常に神経を使うことになります。

その点も生産数を上げられない要因になっていますが、あくまでも「学業の一環」のため学業に支障が出るような無理な大量生産は出来ません。

さらに商品ラベルも従来は意図的に生徒の手書きデザインをラベルにしていましたが、全国展開の商品…と考えると生産量やパッケージも含め、関連業者から厳しい意見も出ている事も事実です。

 

正直、問題は山積みですが、それすらも「貴重な経験」と捉え、先生と生徒が一緒になって楽しみながら取り組んでいるそうです。

 

高校生の今だからこそ、自分たちにしか出来ない事を。

杉田先生は「実はトマトジュースが…と言うよりも、学生の6次化という意識がある」と考えているようです。

この活動は、農業の専門的な勉強だけでなく“生産物を消費者に届ける所まで一貫して勉強できる”点は他にない大きなメリットと言えます。

実際、販売まで考えて加工実習を行うようになってから生徒の集中力や責任感に大きな変化が生まれたと言っており、農業後継者育成の側面でも手応えを感じているようでした。

 

今後は焼き菓子の加工・販売の許可を取得していることから、トマトジュース以外にも商品を増やし、学生が色々なものに興味を持てる環境を作っていきたいと構想を練っているとの事。

一方、園芸科の代表生徒は「緑峰高校のトマトジュースをきっかけに、メイドインフラノの名前をもっと地元で広めたい!」と言います。

 

緑峰高校は周辺他校に比べて地域との交流(農作物や花苗の販売会、カレンジャー娘など)が多く、実際に緑峰高校の行事で美味しい野菜を食べたことをきっかけに同校に進学を決めた生徒もいます。

自分たちの活動が地域に広がる事は、そのまま緑峰高校の魅力が多くの人に伝わる事と考えており、延いては“緑峰高校への入学希望者が増える=農業の後継者が増える”ことまで考えているようでした。

 

コロナ禍の影響もあり、本来は開催される予定だった販売会やイベントも軒並み中止になったことは残念です…と生徒も言ってはいましたが、逆に「こんな時だからこそ、自分たちにできることは何か?」を考えている様子。

極端な話「全国から緑峰高校で勉強したい!」という理由で移住してくる人がいてもいいよね!なんて話にもなりました。(でも、それぐらい魅力のある学校だと思います)

 

そこにはメイドインフラノへ参加することへの負担や不安は無く。

むしろ問題を解決することを楽しんでいる、富良野の未来を担う若者の頼もしい姿がありました。

また、教育現場にも広がるメイドインフラノの活動に新たな可能性を感じました。