認定者インタビュー「(有)藤井牧場」
2018春認定 (有)藤井牧場インタビュー
2018年9月26日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]
牛も人もどんどん育てる牧場!
藤井牧場の創業はなんと1904年。
その歴史は富良野の開拓時代まで遡り、5代目の藤井雄一郎社長が後を継いだ事をきっかけに積極的に6次産業へ参入を開始します。
年間生産乳量は約7000tで、全国でも上位の生産量。
また、2012年には衛生管理基準を示す「農場HACCAP(ハサップ)」を国内認証第一号として取得。
また、サンドセパレーターシステムという、最新鋭のリサイクル型サンドベッド(砂の寝床)を国内で初導入。
衛生管理をシステム化することにより牛の疾病率が激減し、良質な乳量の確保にも繋がりました。
また、牛だけでなく人材を育てる事にも積極的。
深刻な後継問題が叫ばれている中でも藤井牧場への求人の問い合わせは絶えず、東京をはじめ本州からも集まってくるほど。
「いつかは牧場経営を!」「牧場の仕事をするなら本場で!」と希望に胸を膨らませた若者の夢を叶えるため、努力を続けています。
近年、益々厳しくなる酪農業界。
その中においても、国際競争で勝負できる体制を整え、酪農業会や富良野の未来を作る人材も育てています。
チーズを作る工程は牛が生まれる前から始まる
今、最も力を入れているチーズ各種の生産ですが「その工程は子牛が生まれる前から始まる」と、奥様でもある藤井部長は言います。
一般的にチーズ作りは搾乳された生乳を仕入れ、低温殺菌をした後にチーズの元となる酵素を投入。
それを固めたものを熟成させて作りますが、藤井牧場のチーズは全て自社生産の牛乳を使用。
日々、牛の世話をしながら搾乳を行い自分たちで原料を用意しています。
牛が毎日食べる牧草も東京ドーム60個分にもなる広大な畑で自社生産し、飲み水もミネラルウォーターとして販売される大雪山系からの湧き水を使用。
良質のエサと水、さらに厳しい基準で設定された衛生環境の中で育てられた牛は、どれも生き生きした表情をしています。
「チーズ作りよりも、牛の飼育の方が話が長くなってしまう」と笑ってはいますが、その過程があるからこそ「藤井牧場のチーズだ!」と胸を張れるとも言います。
原料となる生乳が作られる過程のみならず、乳を搾る牛の健康状態やエサや水まで把握できているチーズは、日本中を探しても多くはないでしょう。
また、最近では富良野市街地に直営のカフェをオープン。
観光客のみならず地元の人にも利用され、口コミを聞いた芸能人が取材に訪れた様子が全国放送され話題になりました。
言葉で表せない苦楽があるから宝のように輝くチーズが生まれる
敷地内にある専用の加工室で一つ一つ丁寧に作られているチーズは、熟成前にも関わらず既に美味しそうな予感をさせるほど。
各工程を経てから温度を一定に保った特製の熟成庫へ運ばれ、商品として最適な味になるまでひたすら待ちます。
「エサも水もMade in Furano」と軽い口調で語る藤井部長ですが、それまでの過程は言うほど簡単なものではありません。
酪農業は生き物を扱う仕事のため365日24時間体制が基本。
夏も冬も休まずに面倒を見る必要があります。
特に冬の富良野は氷点下20度を下回る日は当たり前。
藤井牧場のある八幡丘は日によって氷点下30度を下回る日もあり、車のエンジンもかからない日があるほどです。
だからと言って餌やりや健康管理を怠ることは出来ませんし、シフト制を導入しているとは言え、牧場としては休むことはありません。
早い日には午前2時半に起きて作業をする事もあり、覚悟はできていてもやっぱり腰が重くなる日もあります。
サンドベッドの導入で牛の疾病率が激減したとは言え、それでも完璧ではなく課題はつきません。
稀に生育不良の牛も出てくるため、厳しい選択をしなくてはいけない場面も…。
約1000頭もいる牛はそれぞれに個性があり、よく見ると柄も違います。
従業員の中にはお気に入りの牛に名前を付けて可愛がることもあるほど。
畜産業を営んでいる以上避けられない話とは言え、愛情を持って牛に接しているが故に辛い思いをする事もあると言います。
子牛が生まれて乳を絞れるようになるまで、約2年。
成牛になり体重が600kgを超える頃、出産を経てやっと乳牛として搾乳を開始。
ここでようやくチーズ加工用の生乳を用意することができます。
熟成棚に並べられた出来立てのチーズはまるでゆで卵のように輝いており、これまでの努力が結晶化しているようでした。
しかし「若いチーズは若い味しかしない」「おけばおくほど旨味が増す」とストップがかかり、我々の口に入るまでにはまだ時間がかかる…との事。
後ろ髪を引かれる思いで熟成庫を振り返ると、そこはまるで宝の山のように見えました…。
富良野から発信する世界レベルの品質を目指して
藤井社長は「チャレンジにこそ、酪農の未来がある」と語り、今が酪農業会の大きな転換期だと捉えています。
様々な活動を通して「道産乳製品はアジアのマーケットでもブランド力を持っている」と実感。
台湾の物産展に参加をした際、藤井牧場のチーズは現地でも高い評価を得ており、大きな展望を広げる契機にもなりました。
その一方で「乳製品はどこの家庭でも健康維持や食生活に不可欠な大事なもの」という従来の酪農家としての使命感も常に大切にしています。
最近ではチーズのラインナップも増え「酒粕チェダーチーズ」や「西京味噌漬けチーズ」も登場。
もちろん、当初から販売されている「チェダーチーズ」「サブロッション」「モッチャレラチーズ」も好評で、料理やおつまみの目的に合わせて色々選べる楽しみがあります。
開拓時代から続く歴史を持ち、富良野の厳しくも美しい風土に育まれた藤井牧場。
“富良野だから出来る事” “藤井牧場でしか作り出せないもの”を「Made in Furano」という新たな形に変えて、日本全国のみならず世界に向けて発信し続けています。