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認定者インタビュー「halu CAFÉ」

2018春認定 halu CAFÉインタビュー

2018年9月28日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]

最高のロケーションと富良野の味を楽しめるカフェ

大雪山系の山々や富良野盆地に広がる畑を見渡せる丘の中腹で、北海道・富良野の自然の恵みを感じゆっくりとくつろげる時間を提供したい。宮本夫妻は2014年にご主人の直樹さんの生まれ故郷である富良野にUターンし、「halu CAFÉ」をオープンしました。

 

二人の前職は「東京交響楽団」の演奏者。公演で世界各国を回るうちに様々な料理に出会い、昔からの趣味であった料理を活かしてお店をすることになりました。

 

元々食いしん坊だった…と笑いながら語る直樹さん。東京で暮らしていた頃は各国の料理を再現して仲間と共に楽しんでいました。お店で出す料理はその経験と腕前を活かしたものばかり。音楽のみならず、料理を通して人に喜ばれる事を自身の喜びとしています。

 

店名の「halu」はアイヌ語で「自然から恵まれた食」という意味。提供するメニューは地元の食材を活かしたものだからこそ、富良野でカフェを営む理由があると言います。

 

その一方で「ダッチベイビー」(ドイツ風のパンケーキ)をはじめ、富良野近郊では見かけない世界各国の料理を提供できるのは本場の味を知る宮本夫妻だからこそ。

 

時には楽団関係者の友人知人を富良野に呼び、本格的な演奏を聞きながら食事を楽しめるイベントを開催する事もあります。

 

食事とはただモノを口に運べば良いというものではありません。その場の空気感や生産者・料理人の気持ちも合わせて楽しむ時間も、豊かな食事を語る上で欠かせない要素と言えるでしょう。

同じ志を持つ仲間と作る味を提供する喜びと誇り

halu CAFÉで提供されるメニューの多くは、周辺の生産農家から直接仕入れたものを中心に使用しています。特に近接する「藏ファーム」や「石井農園」は開業をした時期も同じで、飲食店と生産農家…という関係を超えた「仲間」とも呼べる存在。日頃からのコミュニケーションを通して、使う食材達が「いつ?どこで?誰が?何を?どのように作られたのか?」がわかり、大きな強みと自信になっています。

 

いくら地元の食材と言えども、生産者や収穫時期によって品質に差があるのは避けられない話。しかし、使う食材が生産される過程がわかればいくらでも対応は出来ます。また、そこまでのストーリーがわかるからこそ、生産者の気持ちも料理に込めることができ、自然とお客様に喜んでもらえる料理を提供できると言います。

 

通常のカフェ営業を行う一方「トマトジャム」や「玉ねぎジャム」を作り、Made in Furanoにも参加。生産者の顔も畑の様子もわかる場所から仕入れた間違いない食材と、世界の味を食べ歩いて鍛えられたセンスで作られる味で、新しい富良野の味を提案します。

こだわりの裏には苦労や苦悩も…。それを支えるのは仲間の声。

そんなhalu CAFÉのジャムは、手作りのため大量生産ができません。その上、工程も通常のジャム作り以上に手間がかかるため、時期によっては生産が間に合わないほど。これは大きな課題ではありますが、一つ一つが欠かせない作業のため妥協はできません。

 

トマトジャムはオーブンで水分を飛ばしてから強力なミキサーで種も皮も一緒に粉砕。

 

濃厚なペーストをさらに煮詰めて丁寧に仕上げていきます。濃度が高いペーストは熱を加えると焦げやすく、また沸騰した勢いでコンロ周辺のみならず天井まで飛び散ってしまうので目が離せません。

 

一度作業を始めるとコンロの前に付きっ切りになってしまい、決して効率的とは言えませんが、このジャムを作るためには欠かせない作業だと言います。

 

その際に使う加熱用の鍋は銅製品。通常の鍋より重たく取り扱いが大変なため一般的に使用されるケースは多くありませんが、銅製鍋は熱伝導率も良く火加減が重要な料理には最適。世界各国でも多くのトッププロの料理人が愛用しています。奥様の睦さんは「もはや趣味の域」と笑いますが、ここにも強いこだわりを感じさせる一面が現れています。

 

材料にも道具にもこだわるため「誰にでもウケるわかりやすいものではない」と、ご主人の直樹さんは言います。確かに添加物や着色料を使っていない自然素材にこだわると、作為的に味を調整していない分、素材の味に大きく依存します。また、使える食材の選択肢も限られてきてしまうので、日本全国の数ある商品の中でも個性的で差別化できるものを作ろうとすると、簡単なものではありません。

 

しかし、そこは今までの経験から生まれるアイディアと生産者や地元のお客様の声を活かしてカバーしています。玉ねぎジャムを作る際にも材料に一工夫を加え、ほかにはないような個性的な味を追求。

 

食べ方もチャツネのように料理の仕上げに使うだけでなく、マヨネーズと和えて野菜にディップしたり、パンやチーズのアクセントとして使いワインと一緒に楽しむなど、当初は思いつかなかった使い方をお客様から教わる事もあるそうです。

三位一体の循環こそ「Made in Furano」の本質

今後の課題は「ネット社会への対応」だと宮本夫妻は考えています。夫婦で店を切り盛りしているため、全国展開をするにも人材も労力も圧倒的に不足しています。

 

業者に委託すれば簡単ですが、そうなると安く買い叩かれてしまう傾向があるだけでなく、大量に作らなくてはいけなくなるため自分達や生産者の思いまで伝えることはできません。

 

そこで数は多くなくても、自分達の気持ちをわかってくれる人達に確実に届ける方法として、ネット通販に可能性を見出し準備を進めています。

 

また、トマトや玉ねぎ以外にも近隣農家で栽培されている「お米」にも注目。富良野ではチーズの生産も盛んで、その際に廃棄される「ホエー」と米麹を合わせる事で、新しい商品が作れないか?と研究を進めています。

 

ホエーと米麹を合わせる事で生まれるメリットは、栄養価が高く味が良くなるだけでなく、麹菌が乳糖を分解してくれるため乳糖不耐症の人でも安心して食べられる商品が作れる事。味や品質にこだわる事はもちろん、栄養学や生理学の分野も参考にしながら日々研究を続けています。

 

これらのアイディアは生産農家のみならず、実際に口に運び味の感想を伝えてくれるお客様とのコミュニケーションから生まれるもの。この循環こそ「Made in Furano」の趣旨を体現していると言えるでしょう。