投稿記事

認定者インタビュー「(株)マルハニチロ北日本富良野工場」

2018春認定 (株)マルハニチロ北日本富良野工場インタビュー

2018年10月9日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]

60年以上「ふらの」で愛される地元の味

「マルハニチロ北日本」は2010年に道内および青森県にあった関連事業所が統合し、全国展開するマルハニチログループの主力組織として再編成しスタートしました。グループとしての主な商品はカニやホタテの缶詰などの水産加工品。北海道発の食品を全国に展開し続けています。

その中で同社の「富良野工場」はグループ内の水産加工品以外にも地場産の農作物にもこだわった商品の開発・製造も積極的に参入。前身であるデイジー食品工業(創業:1952年)時代から含めると、60年以上の長きにわたり培われた缶詰加工技術で富良野の自然の恵みをギュッと閉じ込め、北海道のへそから全国の食卓へ本物の味を届けています。

富良野は肥沃な大地と清らかな水に恵まれているだけでなく、昼夜の寒暖差が大きいため農作物が美味しく育つのが特徴です。その自然の恵みと本物の味を全国の食卓に届けるため「トマトケチャップ 」や「にんじんジュース」の開発・生産をスタート。これは現在でもお土産物として売られるだけでなく、地元でも根強いファンに愛され続けています。

(富良野市内では今でも「デイジーさんのケチャップ*旧社名」の呼び名で馴染まれているほどです。)

生産農家の気持ちを形に変える加工技術

富良野工場ではマルハニチログループの水産加工品を製造する一方で「トマトケチャップ 」「トマトジュース」「にんじんジュース」等の製造を引き継ぎました。特に加工用のトマトは、原料調達の前段階から品質管理を行う徹底ぶり。400gの一瓶の中には濃縮された14個分の完熟トマトがつまっています。

まさにトマト本来の味を楽しめる一品と言えるでしょう。

…と、一言で表してしまえば簡単ですが、その裏側には生産者と会社側の長年に渡って築き上げてきた信頼関係によって支えられています。

農作物はどうしても気候の変化が品質を大きく左右します。また、他の作物と収穫のタイミングが重なってしまうと最適な状態での収穫・仕入れが物理的に困難な状況になることも…。昨今では生産農家の高齢化や後継問題も切実で、慢性的な人手不足に直面しています。

そのため、収穫期には富良野工場の社員が生産農家に応援に向かい一緒に農作業をすることもあります。この二人三脚とも言える協力体制と、実際に畑に通い作業を共にしてきた経験があるからこそ「ただ、美味しいだけじゃダメ」「生産者の気持ちを形に変える」「生産農家が一番大変」という気持ちが生まれ、商品開発に活かされています。

「ふらの」を名乗る課題と大きな責任

ただ、課題が無いわけではありません。昨今の運送費や缶や瓶をはじめとする資材価格の高騰。人手不足に加えて異常気象の影響で農作物の安定した確保が難しくなっており、地場産業へのこだわりが逆に大きな負担になっている側面も全否定できません。

特に南富良野町を襲った水害時には加工用のにんじんが流されてしまい、原料調達が思うようにいかない時期もありました。その際は、近隣の生産農家や農協を通して一定の出荷量は確保しましたが、それでもギリギリだったと言います。(当時の反省から緊急時の原料調達先として北海道産原料で代用するリスクヘッジも導入しました。)

企業として経営活動を行う以上、利益を確保するために原料の調達先を変えたり生産効率を上げる事も時には大事な選択です。しかし、それが生産者や購入して頂けるお客様の信頼を損なっては本末転倒な話。安易に輸入原料や本州から調達した農作物を使うわけにはいきません。

「ふらの」というブランドは、それだけで良いイメージが強く価値のある言葉です。しかし、その裏には長年の実績と信頼に応えなくてはいけない相応の責任があり、軽い気持ちで名乗れるものではありません。原料調達のルートの確保や、ブランド名に恥じない品質を守ることへのプレッシャーは想像以上に大きなものです。

本当の意味、豊かな暮らしとしあわせのためにできる事

富良野工場は製造工場としてだけではなく、北海道の中心に位置する立地から営業拠点としての機能を兼ね備え、全国への情報発信の役割も担っています。今後は地域の他企業と協力・連携をしながら、これまでより積極的に物産展への参加や通販の活用も行い、全国展開に向けて準備を進めています。

トマトジュースは畑で採れたピュアな状態をそのままパッケージしており、その他のジュースも添加物を一切使用せず、野菜本来の味で勝負しているため、日頃から、トマトジュースやにんじんジュースを飲む人でも「これは違う!」といわせるほど。

高まる健康志向に合わせて「正しい健康情報」を伝える事も大きな課題。トマトには「リコピン」という抗酸化作用の強い栄養素が含まれ、アンチエイジング食品としては定番です。同じくニンジンに含まれる「βカロチン」も栄養価が高く、健康志向の人には根強い人気です。しかし、栄養価さえ摂れればそれで良いか?という話にはなりません。食卓に並ぶ食材がどうやって生産されているか?どうやって届けられているか?を知ることは、本当の意味で安心できる健康的で豊かな食生活を築ためには欠かせない要素でしょう。

ありきたりな地域ブランドで終わることなく、他にない「違い」や「こだわり」を守り伝える事。

同時に様々なリスクにも対応し、全国に富良野の味を安定供給し続ける事が地域に根付く企業としての使命であり「Made in Furano」として活動する責任だと感じています。