認定者インタビュー「森農園」
2018春認定 森農園インタビュー
2018年10月31日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]
富良野に根付いた農家だから出来る事
富良野市中五区で3代に渡り続く森農園。周辺には広大な玉ねぎ畑が広がり、空知川の豊かな水源を利用して様々な作物が盛んに作られています。
森農園では「環境にやさしい農業」を実践するために、平成20年にエコファーマーに登録。平成26年にはGLOBAL GAPを団体認証で取得し、安心安全な農産物を生産するため、また、より良い農場であり続けるために努力を重ねています。
平成20年には主力の玉ねぎに加えて、にんにくの栽培も開始。同時に「にんにくに熱を加えて熟成発酵させるとプルーンのような味わいになる」と聞きつつけて商品開発に着手します。
現在では「黒にんにく」と「黒にんにくのはちみつ漬け」を展開。
メイドインフラノとして、地域ブランドを全国に広めるために国内外のイベントや物産展に積極的に参加しています。
我が子のように育てた黒にんにく
にんにくの特徴と言えば何と言っても歴史的に実証されている滋養強壮効果。ピラミッドの建設時に、体力をつけるために主要な食料として使用されていたことは有名な話です。また、最近では風邪や感染症予防にも薬効があると証明されただけでなく、ダイエットや老化防止にも効果的であるという研究データも多数あるほどです。
そのニンニクを熟成させたものが「黒にんにく」として全国に流通。サプリメントなどでも多く使用されているので聞いたことがある人も多いでしょう。
大きな特徴は「にんにく特有の匂いが無い」「栄養価と吸収率が良い」事の2点。いくら体に良い…とは言え、あの匂いが苦手で今まで避けていた人でも、黒にんにくなら安心して食べることができます。
森農園の黒にんにくは、全数手作り。土作りの段階から本谷夫婦の二人三脚で作業を行い、まるで我が子を育てるかのように手間と愛情をかけて、栽培と加工を行なっています。
さらにはちみつ漬けで使う材料も、滋賀県の瀬尾養蜂園産の純正はちみつを使用。
実は富良野の名産品であるメロン栽培には蜜蜂の存在が不可欠で(蜂を媒介して受粉交配を行い、実をつけるため)瀬尾養蜂園では長年に渡り、富良野でこの仕事を担ってきました。
つまり、はちみつの原料になる花の蜜も周辺のメロン等の花から採取されたものであり、富良野という土地で農家と養蜂家の力が合わさって生まれたものだと言えます。
その味はフルーティーで「これがにんにく?」と思ってしまうほど。特有の臭みは全くなく、従来のにんにくのイメージとは異なるものに仕上がっています。
アイスクリームやクッキーに使用しても非常に美味しく、その用途は多岐に渡ります。
大量生産の違和感と全数手作りの課題
「安心安全」「全数手作り」にこだわる一方、苦労も絶えない…とご主人である本谷洋一さんは言います。
洋一さんは、専門学校を卒業後は自動車整備士として旭川で勤務。
結婚を機に奥様の志雅子さんの実家である森農園を継ぐために転身してきました。
元々、機械関係の知識と経験も豊富だったため、黒にんにく加工も大型の機械を導入し、規模の拡大を狙う…という発想がなかったわけでもありませんでした。
しかし、それには莫大な費用がかかる上に、大量生産と引き換えに味が一定のレベル以上を超えられず「森農園の特色が出せない」という現実問題が出てきます。
同時に農作物の栽培以外にも様々な仕事が増えてしまうため、夫婦二人三脚の森農園では本来の業務に手が回らなくなるのは明白。大量生産・安定供給の全てが悪い…とは言えない反面、本谷夫妻は「森農園の黒にんにく」の生産を機械化することに強い違和感を覚えました。
そこで「味を安定させること」「品質を落とさないこと」を最優先し、機械を使えば楽な作業であっても、味と品質を守るために手間暇をかけてひとつひとつ丁寧に行なう選択をします。
しかし、加工前にニンニクの根や茎を切り落とし小分けにする作業は「正直、鼻血が出る!」と弱音が漏れるほど大変。
また、黒にんにくを加工する蒸し器は「大企業のようにちゃんとした大型設備ではないから見せるのも恥ずかしい…。」と苦笑いをしています。
加えて、その時々の気候に合わせて熟成時間を調整したり、作物の個体差も考慮して細かい調整を行うのは簡単なものではありません。(通常の熟成期間は20日程度だが、気温が下がる冬場は30日以上熟成させる事もある。特に富良野は寒暖差が激しく、この微調整で大きく味が左右される。)
それでも、森農園の理想とする商品を作る上で欠かせない工程として、小規模生産ならではのメリットを十分に活かしながら、効率的な生産体制が取れるよう日々、工夫を続けています。
生産農家にしか作れない味を全国に!
今後は全国展開も視野に入れてはいるものの、条件が折り合わず実現できていない課題もあるといいます。そこで、まずは「富良野に来たら手に入る」という地に足を据えたスタイルを確立。
地元のフラノマルシェやフラワーランドでの物販を主軸に行いつつ、物産展への参加やふるさと納税の返礼品として利用してもらう事で、知名度のアップを狙っています。
大量生産が出来ず、大企業のように安価で安定供給をすることは現実的に難しい反面、味と品質に関しては決して負けてはいません。実際に口にした人からも「他の国産品と比べても格段に違う!」と驚かれる事もあるほどです。
生産農家だからこそ作れる味やこだわりを全国に届けるため、これからも夫婦二人三脚で走り続けていきます。