認定者インタビュー「フラノビジュー」
認定者インタビュー「フラノビジュー」
2020年8月8日 [認定者インタビュー] [minoru]
ふらの産にこだわるオーナー・シェフ。
フラノビジューの開店は2014年。
店舗は駅の裏手にある住宅地にあり、観光客向けの大型店舗というよりも「町のお菓子屋さん」と言った方が適切な印象です。
周辺は決して人通りが多く賑わっている場所ではなく、文字通り地域に溶け込んだ洋菓子店だと言えます。
オーナー・シェフの高橋卓也氏の出身は、札幌市。
開業以前は小売店でバイヤーをしており、農産物の取引のみならず生産者の営農をサポートする仕事も行なっていました。(時には鮮魚の担当をしていた時期もあったそうです)
小売店の仕事もやりがいがあり面白かった…と思う反面「小さな頃から、独立して社長をやりたかった!」と、元々独立志向の気持ちが強かった高橋氏。
一念発起して独立開業を決めた時に選んだ場所は、両親の出身地でもあり、奥様のご実家にもほど近い富良野市でした。
「たまたま縁があった富良野で開業することになった」と笑ってはいましたが、同時に「僕って人との縁に恵まれているんですよ!」と嬉しそうな表情も浮かべていました。
前職を退職後は、著名なパティシエや妻のご両親の元で修行を積み、通常なら考えにくいスピードでの開業も、人の縁があってこその話だった…と当時を振り返ります。
生産農家と一緒に作り上げるビジューの味
フラノビジューで作られるお菓子は、そのほとんどが地元食材を使用した手作り品。
既にメイドインフラノで登場している「藤井牧場」の牛乳や、「森農園」の黒にんにくの蜂蜜漬けでも使用されている瀬尾養蜂園の蜂蜜など。
その他、イチゴやアスパラガスなど、富良野産や道内産の食材を使用しています。
独立前はバイヤーの仕事をしていたこともあり、卸業者経由で原材料を仕入れるメリットは誰よりも理解していました。
その一方で「一定の品質を保った材料をローコストで仕入れられる代わりに、個々の生産者のこだわりが薄れてしまう…。」と、そのデメリットも痛感していました。
双方を熟知した上で出したフラノビジューの答えは「可能な限り直接取引で原材料を仕入れ、手作りをする」というもの。
地域に根付いた経営を目指すと同時に、地の利を活かして大手お菓子メーカーには出せない、独自の味と品質を追求しました。
その結果、商品に見た目の季節感だけでなく、まるで農作物のような「旬の味」を表現することも繋がります。
高橋氏のイメージは「生産者と常に二人三脚でお菓子を作り続ける」こと。
「作っている側も単一作業ばかり続いていては面白くないし、僕自身が飽きちゃいますから」と楽しそうに話を聞かせてくれました。
メイドインフラノへの想い
高橋氏は当初、メイドインフラノへの認定には消極的でした。
しかし、既存の販路拡大計画とは違う「単に商品を売るだけでなく、生産者の思いを含めて全国に伝えていきたい!」という内容に共感。
日頃から感じていた「生産者と常に二人三脚でお菓子を作り続ける」という理念と一致したため、認定を受けることにしました。
今回、メイドインフラノに認定された4商品を中心に、フラノビジューの商品はそんな高橋氏の思いをそのまま形にしたものばかり。
実は今回の認定を決めた理由も全国展開を重視したものではなく、まずは「地域との絆」を強固にするためのものだと言います。
地元食材を使うことは当然として、全国の人のみならず、地元の人に地元の味を楽しんで欲しい気持ちが根底にあります。
そのため、今回の認定品である塩クッキーをはじめ、甘いものが苦手な人でも美味しく食べられるように作られた商品も開発。
特に焼き菓子類は札幌や旭川の有名店よりも多い種類が用意されていて同業者でも驚くほどです。
また、地域の小学生が自由研究でお菓子作りをするために取材に来ることもあるそうです。
そこには「食べるだけでなく、選べる楽しみ、商品を知る楽しみも提供したい!」という思いがあります。
お客様とのコミュニケーションを楽しむ様子は、昔からある町の駄菓子屋さんに通じるものがある印象です。
高橋氏の目指す「メイドインフラノの成功」は、洋菓子の美味しさをきっかけに、フラノビジューの商品と共に原材料の生産者の名前や思いが伝わる事。
そして、ビジネス的に成功すること以上に「富良野の誇りある考え方や技術を次の世代に引き継ぐ事」が出来て、初めて成り立つものと考えています。
その点だけは妥協できないと、職人としてだけでなく経営者としての厳しくも温かい考えが溢れていました。
文字通り地域に溶け込んだお菓子作り。
そして、それを全国だけで無く後世にも伝えて行く経営者としての姿勢。
これもまた、メイドインフラノ活動を支える原動力の一つと言えるでしょう。