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認定者インタビュー「菓子司新谷」

2018春認定 菓子司新谷インタビュー

2018年10月23日 [お知らせ] [Made in Furano 事務局]

何故か敬称つきで親しまれる富良野の老舗

地元では名前を知らない人はいないほど有名な「菓子司新谷」

なぜか「新谷さん」と呼ばれ、まるで店名のように自然に敬称が付けられて呼ばれています。お年寄りだけでなく小さな子供達まで広く認知され、富良野に根付いたお店の代表と言える存在です。

新谷の創業は1914年(大正3年)まで遡り、開業当時は菓子問屋として営業をスタート。100年以上の歴史がある老舗であり、富良野の発展を支え続けた存在と言えます。1954年(昭和29年)頃には、生菓子の製造販売も始めるようになりました。

現在では「ふらの雪どけチーズケーキ」を筆頭に、市内だけでなく北海道のおみやげとして、空港や土産物店にも商品を並べています。また、全国の物産展や北海道のアンテナショップ「どさんこプラザ」にも積極的に商品を並べ、その知名度はもはや全国区。テレビでも度々紹介され、新谷さんのケーキを目当てに富良野を訪れる観光客も少なくありません。

一見、似たような商品はどこにでもありそうなのに、新谷の商品は何が違うのか?そこには、富良野に根付いた老舗だからこそ開発できたエピソードがありました。

ヒット商品の基本コンセプトは「富良野」という町

もともと菓子問屋として営業をしていた新谷ですが、1950年代に新たな菓子職人が入社した事を契機に大きく事業転換をする事になります。若い職人の新しい技術とアイディアを形にするべく、当時の社長を筆頭に「今までになかった富良野の銘菓を作ろう」と、新たなお菓子作りに挑戦。十分な生産設備も無かったため、商品を作る前に工場を作るところから始めなければなりませんでした。

製造販売を開始した当初は、生菓子やケーキ類からスタート。その後に、1974年(昭和49年)ヒット商品となる「へそのおまんぢう」を発表します。これは富良野市が「北海道のへそ」に位置し、その中心標をイメージしたデザインを形にすることで、富良野の特色を表そうとしました。また、味も当時としては例の少なかったしっとりとした生地に甘みを抑えたこし餡を包み焼き上げる手法を採用。通常、銘菓は10年売れれば良い方…とされていますが「へそのおまんぢう」は40年近いロングヒット商品として、富良野の定番商品として今でも生き続けています。

そうは言っても、発売当時に比べ売り上げが伸び悩んでいるのは否めません。早急に「へそのおまんぢう」と同等、むしろそれ以上の商品を作る必要がありました。

開発者には以前から「富良野は雪景色が美しく、雪をイメージしたお菓子を作りたい」という思いがあり、新商品の構想が持ち上がった2000年当初はチーズケーキのブームでもありました。アイディアを膨らませていく中で、従来の和菓子ではなく洋菓子で勝負をする事を決断。しかし、ここからが苦労の連続だったと言います。

雪どけチーズケーキの開発担当者がまさかのチーズ嫌いだった?

1番の問題は、当時の開発担当者が「チーズが苦手」という点。いくらブームとは言え、通常のチーズケーキには独特の風味があり、苦手な人もいます。さらに、もともと和菓子が主流だったため、洋菓子の新商品を開発するには知識も技術も力不足なのは明らかでした。

しかし、この不利な状況でスタートしたからこそ「ふらの雪どけチーズケーキ」が生まれたと言えます。また「開発者自身がチーズが苦手」というハンディは、そのまま「チーズが苦手な人でも美味しく食べられるチーズケーキ」という、通常の商品とは違う形を生み出す基盤にもなりました。さらに「富良野の大地」や「降り積もった雪」「新雪」などのイメージをふくらませていくうちに、4つの味を凝縮させた多重構造の斬新なチーズケーキが生まれました。

その他にも、雪どけチーズケーキより以前に作られた「ふらのチーズケーキ」があり、食べやすい大きさのスフレタイプとして開発。従来のチーズケーキよりも手軽に食べられる事もあり、こちらも人気商品として知名度を上げていきます。ふわふわした生地の食感も非常に口当たりがよく、甘酸っぱい山ぶどう入りの特製ジャムが全体のバランスを整え、ついついもう一つ…と手が伸びてしまうほどです。

増産に合わせて焼型や撹拌器などの自動化した生産ラインもありますが、最終的な仕上げは手作業で行う必要があるためピーク時には体力勝負に…。「正直楽じゃない!」と苦労話を交えながらも、社内の雰囲気は非常に明るく、その勢いはまだまだ衰えそうにありません。

今後の展開と富良野のフロント企業としての役割

新谷はチーズケーキのラインナップを充実させるだけでなく、富良野産の材料を贅沢に使ったバターカステラも「極」の名を冠してリニューアル。「へそのおまんぢう」「チーズケーキシリーズ」に続く新たな富良野の銘菓を作り出しています。

また、2010年に社長の代替わりを機に、道内のお菓子メーカー「もりもと」と提携。「新谷」の名前を残しつつもブランド力やパッケージ面で協力し合い、経営面でも強化を図りました。

勢いが止まる気配を感じない「菓子司新谷」今後も「Made in Furano」のフロント企業として、ますますの期待が高まります。